上達の法則
だいぶ前に発売された本で、読まれた方も多数だろうと思いますが、最近読みましたので記載します。
筆者自らの経験・上級者に対する深い洞察から得られたものを一般化し著されています。
比喩や例が分かりやすく、イメージしながら楽しく読みました。
現在中級者以下で、上級を目指す方にはオススメできる本だと思います。
- 作者: 岡本浩一
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2002/05/01
- メディア: 新書
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はじめに、上達を極める10のステップという最後の章の目次を紹介したいと思います。
■ 上達を極める10のステップ
1. 反復練習をする 2. 評論を読む 3. 感情移入をする 4. 大量の暗記暗唱をしてみる 5. マラソン的な鍛錬をする 6. 少し高い買い物をする 7. 独自の訓練方法を考える 8. 特殊な訓練法を着想するプロセス 9. 独自の訓練から基本訓練に立ち返る 10. なにもしない時期を活かす
この目次を読んだだけで、分かる方には分かってしまうのではと思います。
この10個をforループしながら物事に取り組めばある程度まで上達できちゃうんじゃなかろうか、
と思うくらいよくまとまっていると感じます。
いくつか目に留まったキーワードを列挙します。
■ 上級者はコーディング能力が高い
技能の中には言語的にあらわしにくい要素がたくさん含まれている。
例
・ラケットで球を打ったときの感覚 ・スライスピンをかけるときの腕の動かし方 ・体のひねりかた、タイミングの調整の仕方 etc...
コーディング能力が高いとは?
知識が貯蔵されるためには、要領限界のある「ワーキングメモリ(作動記憶)」(数秒程度で揮発)を通過させる必要があり、 言語に準じた形式にその人の思考の中であらわされる必要がある。
つまり、精通する過程で、その動きなり分野なりについて端的なその人なりの言葉ができあがっているはずだということでよさそうです。
自分の言葉で簡単にわかりやすく説明できなければ上級者ではない。
まで言ってもいいのではないでしょうか。
■ 上級者はチャンクが大きい
池谷裕二さんの本にも出てきそうな内容です。
先ほどワーキングメモリには限界があると記載しました。通常それは7チャンクであるとされているそうです。
意味のあるまとまり7つまでが短期記憶の限界、ということです。
意味を見つける能力が高まると、1チャンクに入る記憶事象の量が格段に多くなる。 上級者の記憶がよい大きな理由なのである。
これは上級者の記憶が優れているカラクリのひとつを明かしています。
「意味を見つける能力の向上」がキーワードですね。
個人的になりますが、これは自分にも変な特技があります。
「4桁の数字を相当数記憶できる」
という不必要な特技です。
タイムを争うスポーツを長いことやっていた結果、「4桁の数字」を一塊として頭に入ってくるようになった
といった感じです。
ある人の競技結果(例えば24"23)のようなものを、印象的なレースや記録集を繰り返し見ているうちに、「4桁の数字」
が、言ってみれば「その競技者をあらわすもの」≒「その人の名前」のような感じで頭に入ってくるようになったというイメージです。
現在私の職場では「4桁の数字」で物件番号を管理しているのですが、私は入社以来、関わった番号をほぼ全て
そらで言えます。(繰り返しになりますが不必要な特技です 笑)
それに近いことだととらえています。
■ 自我関与が高く、価値観を持っている
自我関与=その課題に本気で取り組む度合い
これは「責任感」とも近いと思います。
上司についているときでも、自分の仕事のように、自分の責任であるかのように関与できる人は、
確かに上級者予備軍にも数多く見受けられます。
その他
■ イメージやこだわりが鮮明になる
■ 他社を見る目が変わる
■ 自分を正確に認識できる
■ 鳥瞰的認知が高い
などなど
。。。
その他ここには書きつくせませんが、
本の中盤以降にスランプについて詳しく記載されています。
少しだけ紹介しますと。
■ スランプの基本的な原因
・ 心理的・生理的飽和 ・ プラトー ・ スキーマと技能のギャップ ・ 評価スキーマと技能とのギャップ
実際はこれらが単独で起こっていることはまずなく、いずれかが微妙なウェイトで混じっているのが普通だそうです。
これらの解決法を一つ一つ記載されているので、スランプにお悩みの方は勉強になるかと思います。
個人的には、そのスランプ(技能の停滞)によって
場合によっては、能力的な限界を認めなければならないこともある。
という部分が印象的でした。スランプではなく、限界である、と。
けれどもその場合は、諦めるとは意味が違う、「受け入れる」ということだと思います。
受け入れずに頑張る姿もかっこいいのですが、本当に純粋にぶつかると心がやられるところまでいってしまう、
という場合もあるように思いますから。
■ 総じて
私のまとめになりますが。
・上達には近道ではなく法則がある。(反復・自我関与・美意識) ・上級者は俯瞰的かつ精密的にその対象をとらえることができる。(その点を意識してトレーニングするのも効果があると思う) ・スランプには決まった原因があり、決まった対処法がある。自分の限界の可能性もある。