ソフトウェアはまだまだハードウェアから学ぶべき
日経エレクトロニクスの菅野文友氏のインタビューが面白かったので記載します。
- 作者: 菅野文友,山田雄愛
- 出版社/メーカー: 日本規格協会
- 発売日: 2001/10
- メディア: 単行本
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日立製作所時代には「鬼」と恐れられた怖い上司だったらしい菅野氏。
半世紀にわたる経験からいくつもの持論を持つ。
■ソフトウェア技術者は子育ての経験を持ったほうがいい
大規模開発のマネージャは生半可では務まらない。
マネジャーの極意を学ぶ良い方法は一つ、子育てであると話す。
・言うことを聞かない ・すぐ間違える ・泣く わめく
そんな子供を育てることとソフトウェアの開発のマネジメントは良く似ている。
だから、ソフトウェア技術者は子育ての経験を持ったほうが良い。
子育てを通してマネジメントを学べる。だから子育てしろ。と。なるほど。
■技術者として重要なこと3つ
・いつでもどこでも眠れる(悩みを明日に持ち越さない) つまり楽観主義であること。 ・何でも食えること 楽観主義のベースとなるエネルギー源。 ・何に対しても好き嫌いのないこと 選り好みせず何にでもぶつかれ、という意味にとりました。
「楽観主義」というのは、「楽観主義でない状態」でつらい思いをした末に
たどり着けるものなのではないかなと私は思います。
一所懸命ぶつかって、駄目なら駄目でスッパリと諦められる。これは必要ですね。
■日本のソフトウェア開発が低迷した要因
結局、人材不足
70年台、ソフトウェア産業は人材を大量に採用したが、質を忘れた。
・チームワークができない人間は大規模なソフトウェアは作れない。 ・人間は必ずミスをする。ソフトの問題は全て人的ミスに端を発する。 ・ミスをカバーするのは、チームしかない。
深いお言葉です。
小野和俊のブログ:大手メディアによるIT業界ネガティブキャンペーン
ネガティブキャンペーンの中にも(笑)、最後には若者にチームワークの重要さを諭す記事がありましたね。
なまじできる人がチームワークができなかったりする。
(技術者には、チームワークができない人が多い気がするのは気のせいじゃないと思うんですが。)
・個性を持つという考えを捨てろ。「俺が俺が」という人間に大規模開発はできない。 ・ソフト開発はチームの英知を結集するもの。肝に銘じるべし。
ソフトに限らず、他の仕事も、仕事以外でも、チームワークなしでは先がありません。
「個性を持つという考えを捨てろ。」はそれにしても厳しいなぁ 笑
■専門分野を多く持つムカデ型人間を目指すべき
ソフトウェアだけを学んでも技術は向上しない。
・物理学 ・数学
をしっかり学ぶ。
物理の実験はソフトの開発と似ている部分が多い。
■電気・機械の技術者の常識程度の知識はソフト技術者も身に付けるべき
・相関関数 ・寄与率(相関関数の2乗) etc
■ソフトウェア開発の成功のポイント
・バラつきの把握 ・管理図の利用
管理図を駆使して仕事の基本ABCに沿ってやれば誰だってソフトは開発できる。
仕事のABCとは
A 当たり前のことを B ぼんやりとせずに C ちゃんとやることだ 笑
管理図さえちゃんと駆使すればできる、と。管理図が重要なんだ、と。
繰り返しおっしゃっています。
欧米のソフト開発手法に手を出すより、品質工学の手法を徹底的に勉強したほうが
よっぽど近道だという考えを持たれています。
・ウォーターフォール
・アジャイル
根底にあるのは「管理図」だ、と。
ここでは田口玄一先生の「実験計画法」を紹介されています。
品質工学の基本の「タグチメソッド」は電気・機械の人間なら必ずどこかで学ぶとあります。
うーんそうか。読んでみようかな。と思わせられました。
■デザインレビュー
デザインレビューは本来、ソフトウェアの成果物を「審査」すること。
だが、日本では独自の進化を遂げた別物。
「周知結集の先憂後楽」
先々の問題を見越して議論するものを意味する。
■最後に
ソフトウェア技術者は海外のソフトウェア開発手法ではなく、むしろ
日本のハードウェア技術に目を向けたほうがいい
と説きます。
日本の職人は1000年の歴史がある
近代産業だけでも100年の歴史がある。
ソフトは長くみても50年。
謙虚にハードの手法を学べ、と。
力強い発言には説得力がありました。
品質工学にはちょっと興味が湧きましたね。
近い将来、ソフトの手法はまだまだ、と言われないように、
若い人間の一人として、謙虚に他者から学びたいと思いました。
タグチメソッドわが発想法―なぜ私がアメリカを蘇らせた男なのか
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終始厳しい人柄が覗くようなインタビューでしたが、菅野氏のソフトウェアに対する熱意が伝わってくるような
熱い記事でした。久々に読んでて熱くなったな。
怖いし叱られるけど、彼の講演には若い方含め人が集まるそうです。ちょっと納得。